皆様 暑中お見舞い申し上げます
毎日、暑い日が続きます。
環境によって、体調や精神は大きく影響を受けるのだなあということを実感するような外気温です。
気象庁では、東京都心は、1875年6月の観測開始以来初めて6日連続の猛暑日を記録しました。
私が子ども時代、30℃を超える真夏日でさえ珍しかった記憶があります。
「猛暑日」とは?
気象庁によりますと
夏日とは 日最高気温が 25℃以上の日
真夏日とは 日最高気温が 30℃以上の日
猛暑日とは 日最高気温が 35℃以上の日
また、熱帯夜とは、夕方から翌日の朝までの最低気温が摂氏 25℃以上になる夜のこと
をいうそうです。
ちなみに、こんなに丁寧に日本全国の暑さ・寒さを調査し、
「猛暑日・真夏日等の日数一覧」を 公開しているサイトもあります。
そんな暑さであっても、
女社長であり、
母であり、
他者に仕事をさせるわけでなく自らが仕事をする私・・・
実際、暑さのおかげで、体力や精神力が低下しており、
滞る仕事量に、さらに悲しく思うことで、精神的疲労・やるせない状況に陥っております。
そんな状況ではありますが、
本日、次女と自分の夏を気持ちよく過ごせるような綿のワンピースを購入し、
少し、気持ちが上向き!
女性というのは、自分に心地よい状態を作ると、元気になれる特性がございます。
そうした状況で、忙しさと暑さのあまり、
手をかけられなかった玄関と お庭の花壇のお手入れをいたしました。
花壇のひまわりが、太陽のおかげのためか、
どんどん大きく育ち、道行く自動車に迷惑をかけそうな勢いで、
なんとかしないと・・・
と思っていたものを、
思い切り汗をかいて、
新しく購入した綿のワンピースを着よう!
という、小さなご褒美を胸に、
ひもで縛って、道路にはみ出さないように手配をしました。
さらに、暑さで枯れはじめた紫陽花を 高枝切狭でチョンチョン!
ギンモクセイなど、伸びすぎた枝や紅葉なども、剪定をし、
その始末をしていた瞬間です!
生まれて初めて、「黒羽蜻蛉」(ハグロトンボ)と出会いました。
(写真:トンボフィールド観察記「ハグロトンボ」)
真っ黒なトンボで、しかも蝶々のようにひらひらと優雅に、
空低く(というより、私の目線の高さで)飛んでまいりました。
赤トンボは、農業プロジェクトのお米つくりの草刈の際に、
田んぼを気持ちよく飛び回るので、毎年、見慣れているのですが、
このハグロトンボとの出会いには、
なんだか心がドキドキしてしまいました。
おそらく、その飛び方が、人(私)に語り掛けるようなやさしい飛び方で、
伐採した木や葉を片づける私の周りをひらひらし、
さらに、鋏や軍手を車庫に片づける際にも、
私を追うように、車庫を出入りしていたのでした。
なんとなく、心が透き通る気持ちになり、
裏手の空調の室外機の上に溜まっていた蝙蝠の糞を水で流したり、
家の塀や事務所の窓まで、水をかけてピカピカにして、
小一時間を外で費やしました。
汗だくだくの体を、
購入した綿のワンピースに着替えて、パソコンに向かい、
「黒いトンボ」と検索してみました。
思わず嗚咽の声を上げて、涙が流れてしまいました。
ハグロトンボは、暑いお盆の時期に現れ、
「おはぐろとんぼ」
「かみさまとんぼ」
と称されているそうです。
お盆の時期は、ご先祖様の霊がおうちに戻るといわれ、
各地で迎え火・送り火を焚いたり、提灯を飾り目印にしたりします。
古来から蝶やトンボは亡くなった人の魂が姿を変えて現れるといわれ、
ハグロトンボは、こうしたご先祖様の魂として、
神聖な生き物として「かみさまとんぼ」と呼ばれたりしたのだそうです。
生きていると、大変なことはたくさんあります。
そして私のように、自分一人の力で、生活をし、
子どもも真っ直ぐに育てていかねばならない・・・と、
日々、緊張の中で生きていると、時に気弱になることも多々あります。
ここ数日、厳しい暑さで体力の衰えを感じ、
仕事上では身勝手な人たちに振り回されたり、いやな思いをしたり・・・
という中で、
すべてを投げ出してしまえたら、どんなにか楽だろう
と思うこともしばしばでした。
普通の中小企業の経営者は、(経営が)大変だ大変だといいつつ、
ゴルフだ!ボーリングだ!勉強会だといいながら、ランチだ!飲み会だ!と、遊び周り
(失礼!それが仕事と言い切る人も多いようです)
私のような自らが仕事をする経営者にとっては、
「あの人たちは、別世界の経営者ではないだろうか?」
と、まるで異星人のよう。
そんなことを思う暇ももったいないわけではありますが、
目に入れば、どうしても見ない振りができず、
心というのは、ほんとうに困ったものです。
さて、自社の社員の愚痴を言い合うランチ会など、
ご免こうむって、
道行く人たちに迷惑をかけないよう、
自ら汗を流す私に、
細くきれいな
ひらひら・ふわふわ・と可憐な飛行をするハグロトンボは、
もしかしたら、15年前にすい臓がんで若くして亡くなった母が、
「まりちゃん。がんばって。あなたらしく、素直に生きればいいのよ。」
と、疲れた私の応援に駆けつけてきてくれたのではないか・・・と感じたのです。
その時・・・
詩人 吉野弘 氏の 「I was born」 が浮かびました。
中学国語の教科書に掲載していた「I was born」
授業では「I was born」― 生まれるってことは、主体でなく受動なんだってところに行き着く・・・
吉野弘「I was born」で検索をすると、その詩の全文を見ることができます。
父は無言で暫く歩いた後、思いがけない話をした。
– -蜻蛉(かげろう)と言う虫はね。生まれてから二、三日で死ぬんだそうだが それなら一体 何の為に世の中へ出てくるのかと そんな事がひどく気になった頃があってね–
僕は父を見た。 父は続けた。
–友人にその話をしたら 或日 これが蜻蛉(かげろう)の雌だといって拡大鏡で見せてくれた。 説明によると 口はまったく退化していて食物を摂(と)るに適しない。胃の腑(ふ)を開いても 入っているのは空気ばかり。見ると その通りなんだ。ところが 卵だけは腹の中にぎっしり充満していて ほっそりとした胸の方にまで及んでいる。それはまるで 目まぐるしく繰り返される生き死にの悲しみが 咽喉もとまで こみあげてるように見えるのだ。淋しい 光の粒々だったね。私が友人の方を振り向いて <卵>というと 彼も肯いて答えた。<せつなげだね>。 そんなことがあってから間もなくのことだったんだよ、お母さんがお前を生み落としてすぐに死なれたのは– 。
ハグロトンボは、川トンボという種類に属し、
自然のままの生物生息の循環可能な清らかな小川近くに多く生息します。
過去、日本各地で見られたハグロトンボも、
環境汚染等で数が減り 貴重なトンボになっています。
ハグロトンボは 「羽黒蜻蛉」 と書きます。
私は、今日、この「蜻蛉」の文字を含む、黒いトンボを見て、
吉野弘氏の詩を思い出したのでした。
そして、私にとっては、黒いトンボは、
亡くなった母の私への愛情なのでした。
学校の授業で答えを出すのとは別の、
個々の経験や人生から出てくる「あるもの」こそ、
その人間の答えなのでしょう。
トンボは前に進むことしか知らず、後ろに戻る飛び方をしません。
(後退せず前に進む虫であることから 「勝ち虫」 と呼ばれ、戦国時代は武士に好まれ甲冑などの装飾に用いられました)
インディアンでは 「勇気の象徴」 と言われています。
お盆近くになりました。
母が亡くなり、
昔でいえば元服の15年・・・
大人として 勇気をもって 自分に自信をもって生きなさい!
そんな 母の 応援メッセージだったのかもしれません。
死んだ後も、そんな風に、
誰かの心に残る 自分でありたいと思った、
猛暑日の午後を過ごした 小幡万里子 です。
暑中お見舞い申し上げます
お時間ございます方は、
今COCO にある ESSAYS IN IDLENESS – 徒然なるままに の
拙文を お読みいただけましたら幸いです。
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