世の中には、いろんな人がいて
街には、いろんな人がいて
電車の中にも、いろんな人がいる。
ホームレスのおじさんが電車に乗っていた。
みんな、嫌悪感を丸出しで
そのおじさんを見ていた。
おじさんは優先席に座っていたのだけれど
誰も、おじさんの隣に座らなかった。
座席ひとつ間を空けて
男性が座っていたのだけれど
とても迷惑そうな顔をしていた。
今時のホームレスって
結構、身綺麗で
ローラー付きの旅行バッグを
コロコロ転がしながら
定住地を持たない人が増えている。
でも
そのおじさんは
昔気質の(って、意味合いが違うけど)
昔ながらのホームレス
って感じだった。
紙袋を2つくらい抱え
靴のかわりに、防水加工の紙を
足に巻いて紐で縛っていた。
電車に揺られる人々は
怪訝そうな顔でおじさんを見たり
おじさんの靴がわりの
紙の靴を、まじまじと見て
薄ら笑いを浮かべてた。
周りのそんな視線を受けて
おじさんは、床に唾を吐き
聞き取れない言葉で
畜生!と怒鳴っていた。
私ね。
そのおじさんの隣の席に
「すみません。お隣いいですか?」
って、座っちゃったんだ。
ネットカフェでシャワーを浴びる
女性のホームレスもいたりする。
初めて行ったネットカフェで
そういう女性を目にした。
そのおじさんは
きっと、シャワーもお風呂も
ずっと入っていなかったのだと思う。
饐えた匂い~を通り越して
電車の中の空気が循環する方向によって
息を止めたくなるような時もあった。
私、シャネルのNo.5がお友だちで良かった~と
自分のシャネルの香りを頼りに
20分くらい終点まで
いろんなこと、思った。
床に唾を吐いてたおじさんは
私が隣に座った途端
急におとなしくなった。
「畜生」って言葉も
ぶつぶつと、文句を言ってる様子も
影を潜めた。
私的分析によると
おじさんは、ずっと、周囲から
「汚い」
「嫌だ」
「死ねよ」
なんて言葉や視線を受けていたのだろうな…と思う。
そこにさ~。
ちょっといい女が
自分の隣に座った。
なんかさ。
床に唾なんて吐いたら
この、ちょっといい女に
なんて思われちゃうかな~
なんてことが、頭をよぎったんじゃない?
私だって
お金なかったら
ホームレスになってたかもしれない。
結婚前に、母が私に渡してくれたお金が
今の私を生かしてくれている。
そして、今。
私は拾われて
なんとか、お金を稼ぐために
頑張ってる。
でも。
そういう人たちの愛情がなかったら?
愛情や信頼を裏切って
さらにお金を出し惜しみするような男に
粗大ゴミのように捨てられた女は
どうやって生きる?
そのおじさんより
もっともっと
みっともない
かっこ悪い
誰からも
嫌悪され
蔑まれ
生きてる資格なんて無い女として
恥をさらしながら
生きていたかもしれない。
電車の中で
おじさんを見て
あからさまに嫌悪の表情を見せる人
顔を背ける人
紙の靴を笑っている高校生
働かないから
お金がないから
他人を嘲笑する人間を
許さないといけない?
私は、人を嘲笑することのできる人間の方が
理解できない。
別に、自分をいい女なんて
これっぽっちも
思ってないけど
おじさんがね
ヒトの冷たさに
刺を刺されて
自分も針を出さなきゃいられなかった時
こんな女が
隣に座って
当たり前のように
「お隣いいですか?」
って、丁寧に聞いてきたら
やっぱり、いつまでも
針を出していちゃいけないって
気づいてくれるんだな~って思った。
お仕事しないんじゃないよ。
お仕事したくても
やらせてもらえない世の中なんだもん。
私だって
飲んだくれて
他人に迷惑かけちゃうことあるもん。
そんなこと思いながら
私のシャネルの香り・・・を感じた。
私自身も、シャネルの香りのおかげで
20分をやり過ごしたのだけれど
おじさんも、ちょこっと
シャネルの香り・・・に
癒されたかもしれないよ。
他人に嫌悪をあからさまに見せることのできる神経をもつ人が
私は、どうしても、受け入れられない。
あなたは、そんなに完璧なヒトなの?
私は、きっと、一生、未熟で
一生、なにかを求めて
生き続けるのだろうな…
お時間ございます方は、
今COCO にある ESSAYS IN IDLENESS – 徒然なるままに の
電車の中で の拙文をお読みいただけましたら幸いです。
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