教育の引き出し 高校見学

夏休みのトンでも課題

2008年7月25日

次女の中学校では、高校訪問が、夏休みの課題として義務づけられている。
高校を訪問し、雰囲気をつかみ、自分で判断することはとても大事なことだ。

高校に入ったはいいが、「自分には、ちょっと違う」と高校中退者は後を絶たない。
それを防ぐために、高校選びは慎重に!ということらしい。
志望校を早くに設定し、それに向けて頑張ることは、とても大事な事だと思う。
その大事な点は、理解出来る。

高校訪問も見学も、受験前に訪れるよりは時間的な余裕のある2年生で
ということも理解出来る。

だから、私は長女も次女もそれぞれに、将来の夢を叶えることのできそうな学部のある大学を訪れたり、次女には、一番頂上にある高校を見せることで「こんな高校生になりたい」という憧れの思いを持たせたいと考えている。

長女は、楽しい高校生活を送り、転入という苦労もあり、それはそれで、ひとつの頑張る高校生の姿ではあるのだけれど「こんな高校生になりたい」と思ってもらえる高校生ではないので、次女にとって、憧れの気持ちを持てるような高校生に出逢わせたいと考えているのだ。

しかし、それを「夏休み中に必ず3校訪れて、レポートを出しなさい」というのは、随分とご親切なこと。と苦笑する。

「2年生の夏休み中に、学校を見ておくといいですよ」

と、教えてくれるのは有り難いこと。

だが、強制するのは、ちと違うのでは?と感じる。
しかも、子どもに高校に電話をさせ、担当の先生についてもらい、校内を案内してもらいながら質問をして来い。という課題。

私は、学校は、現在、その学校に通っている生徒のための学校だと思っている。
卒業生が、お世話になった先生のところを訪れ、その先生と個人的に、大人としての交流を深めることは、ある先生の「教え子とお酒を飲みに行く」という夢のように、とても素晴らしいことだと思っている。

しかし、入れるかもわからない中学2年生のために、夏休みの生徒のための部活動で学校に見えられる先生に、学校案内をしてくれと、子どもに電話をさせようとする考えに、私は、呆れてしまった。

自分のことは自分で。という当たり前のことをさせようと、その思いはわかるのだが、学校訪問というアポイントメントを子どもにさせる親の子どもを、訪問先の先生は、どう思われるだろう?

しっかりしたお子さんばかりならば、それもいいのだろうが、そんな子ばかりではないのが現実である。

私は、次女には、まず、頑張っている高校生を見せたい。

教育モニターというお役目をいただき、様々な都立高校を見せていただいている身としては、学習意欲もなく、なんとなく、なにも勉強をせずとも、高校生になり、「親が高校ヘ行けと言ったから」という高校生は、中学生に見せるべきではないと思う。

近所だから見にきました。というのは、学校公開として、学校側が準備してくださる日に行けばいい。

電話をして、アポイントメントを取って伺わせていただくからには、その高校を予め研究し、その高校に入学の意志があるということを、子ども自身が持ってこその、訪問であらねばならない。

国立の附属高校は、すでに学校説明会に行った。
長女もオープンキャンパスに出かけ、教育方針も理解しているつもりだ。

女子校なので、気の進まなかった次女だが、100年を超える伝統を感じる校舎や、明治から伝わる実験器具や校舎内の磨き抜かれた階段や廊下に、彼女の中のロマンティシズムが刺激されたようだった。

高校時代の友人とこんな話をした。

「次女にね。あなたが、放課後のこの踊り場の、この窓から柔らかなお陽さまの光の入るこの場所に立ってそうしたら、いろんな物語があなたの頭の中で作られるのかな。って想像するしちゃうの。ママは、あなたが、この高校に入ることが出来たら、あなたにとって、どれだけ、心豊かな時間を送ることができるだろうって、わくわくしちゃうの。勉強も学校生活も、大変だろうとは思うけれど、他の都立高校や私立高校では味わえない伝統を大切に重んじる、この学校は、あなたにとって勉強だけではない素敵なものをいっぱい与えてくれるのではないかな。って、話をして、洗脳してるの」
という私の言葉に、友人は
「そういうお母さんって、いいね」
と、言ってくれたのだけど。

本気で、その高校の図書室や、踊り場で佇む彼女の姿が、私には、浮かんでしまうのだ。

高校は、それぞれに、中学生に向けた説明会や見学会を、日程を決めて学校を公開してくださっている。
その学校の生徒でもない私たちは、学校側で準備してくださる時間を有効に使わせていただくことに感謝し、わざわざ個人で、その学校の先生のお時間を奪うという偉そうな態度は、いかがなものかと思うのだ。

長女の転入を考えた時、高校に入学して直ぐに、私立の高校に連絡したことがあった。

「中高一貫ですので、高校の途中からの生徒の受け入れはございません。実際に、転勤が決まってからご相談ください」

と言われた。

その時は、私立高校なのだから、お金さえあればいいじゃない、という気持ちがなかったわけでもなかった。
この程度の偏差値の高校で、偉そうに!なんて。
しかし、どんな高校であっても、今、通う生徒のための高校であって、逆に、その高校に入ったからには、しっかりと、勉学をさせ、学力を身につけさせるという責任を果たしてくださるのだろうと思う。

誰でも受け入れます。
いつでも来てください。
来るもの拒まずは、教育者としての姿かもしれない。

しかし、自分の学校の生徒を第一に考えることのできない学校が、本当に、子どもを預けることのできる学校なのであろうか?
結局、私立高校も、私が、電話をして事務の方とお話をした。
その高校の系列の大学を卒業したので、校風も生徒さんの様子も知っており、我が子に一生懸命勉強してもらって、憧れのこの高校にぜひとも入れるだけの力を持たせたいと。

秋の説明会に伺わせていただくことをお伝えし、学校案内のパンフレットをいただき、外観を見せていただくことを、快く承諾いただいた。

中学の担任との面談で、夏休み中の、先生を煩わせての見学はご無理があるので、外観だけの見学とパンフレットをいただくことにいたしましたと、お話しすると「雰囲気を感じてくれたらいいので、別に構いません」と、言われてしまった。

次女の友だちは、自分で高校に電話をし、耐震工事中だからとか、高校の見学会に来るようにと、気持ちが萎えるような体験をして、高校見学なんて、面倒くさい!とイライラしていたらしい。

子どもは、真剣に先生の言われた言葉を受けとめる。
生徒のことを本当に考えているならば、もっと、先生が真剣に、生徒の気持ちを慮ってもらいたい。

長女が最初に入学した中学は、PTAで、親が主催で、近隣の高校の先生を呼んで、保護者向けに高校説明会を開催していた。
ある年は、PTAでバスを出し、高校を何校か巡り、実際の高校を見て回るという行事をしていた。

次女の中学の先生も、一生懸命に考えての策だろうが、高校が、どんな生徒でも受け入れるものだと甘えた考えを持っているのかもしれない。
先生は、高校の現状を知っているかのようで知っていないのであろう。

私は、こう言いたいのだ。

中学の勉強をやり直せる高校もあります。
しかも、6~7人に先生が1人ついてくださる、この上なく、恵まれた環境で高校の勉強を教えるはずの、教えたいはずの先生が中学で落ちこぼれた生徒を救ってくれるのです。
だから、意欲のない生徒に合わせて、頑張る生徒を見捨てないでください。
頑張る生徒の集まる高校では、生徒同士で刺激を与え合い、成長し合うことができます。
そうした、頑張る生徒にこそ、そうした環境を与えてやれる、手助けをしていただけませんか?

と。

 

 

You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply