想ひ出すこと

彼から見た彼

2008年8月12日

キスしてしまった。

彼女とは、ずっと一生の付き合いでいたかった。
だから、15歳のあの日に出会った時から、自分の心をコントロールしようとしていた。
笑顔の可愛い女の子。

小ちゃくて
生意気で
そのくせ、すぐに傷ついて
笑顔の裏に
暗い宿りを見せる瞳が
気になって気になって仕方がなかった。

だけど
彼女は、あまりにわかりやすい人で
彼女の思いに飲まれる自分も嫌だった。
彼女の思いは、嬉しくて
だけど重い。

10代の自分に
彼女の素直な気持ちそのものを受けとめるには
自分はあまりに未熟だったのだ。

女の子には興味がないと
そういう自分を演じる自分が心地よかった。
彼女の自分に対する思いが大きいほど
自分の虚栄心は満たされ
彼女の心が
自分の男としての価値を上げているような気がしていた。

時々。
いつも笑顔で元気いっぱいの彼女が
雨に濡れた小鳥のように震える姿を見ると
抱きしめて
思いっきり
その小鳥を握りつぶしてしまいたい衝動に駆られた。

彼女には、そういう怖さがあった。

彼女には、そういう寂しさが感じられた。

だから
自分の気持ちをコントロールしていたのだ。

と、言い訳をしてみる。

本当は彼女に囚われる自分が嫌だったのかもしれない。
それだけ
本当は、彼女を愛していたのかもしれない。

20歳のあの日。

酔いを言い訳に
二人だけの忘れたフリをした

想い出になってしまった。

彼女を思い切り抱きしめた。

震える小鳥そのもので
彼女の鼓動の早さが
自分の腹に伝わった。

その鼓動の強さが
腹から下に、ズンズンと響き

「どうして〜どうして〜」
と繰り返すその言葉が
自分の源を熱くさせ
彼女を欲しいと願っていた。

震える小鳥は自分の腕の中で
ドクドクとした源の熱さを感じ
身体を固くしていた。

もう。
彼女を自分のものにしたいと思った。

10代ではない自分なら
彼女を受け入れられるだけの男になったと思った。

彼女を抱きしめ
いきなり激しく彼女に接吻し
彼女の唇を抉じ開け
自分の熱を帯びた舌を絡ませた。

彼女は、そういう激しいキスは初めてだった。

自分から逃れようとする彼女を
なおも強く抱きしめた。

小鳥を握りつぶしたい気持ちだった。

誰かのものになるのなら
自分がそれを壊してしまいたいと思った。

彼女は、身体を固くしたまま
「バカ!」と、そっと身体を離した。

「ここから、一人で帰れるから〜」

そう呟いて
彼女は後ろを振り向かず
長い坂を上がって行った。

僕は
大事なものを失ってしまったのかもしれない。

本当は
そこから前に進むべきだったのかもしれない。

僕も混乱し
彼女も混乱していた。

次に会った時。
二人とも
その日の夜の出来事は
夢だったかのように
二度と触れなかった。

15歳の春。

君と出会えてしあわせだった。

今、君はいない。

君によく似た笑顔と暗い宿りを持つ
忘れ形見を遺して
もう、二度と逢えないところに
旅立ってしまった。

君に触れた時。

自分の残酷な男に気づいた。

だからこそ、君を守りたかった。

きっと、暗い宿りを隠して
君は笑顔で言うだろう。

「ずるいよ。ずるいよ」って…

 

 

お時間ございます方は、

過COノCO途 にある 想ひ出すこと

拙文を お読みいただけましたら 幸いです。

 

 

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