あーちゃんとまゆのてづくり交換日記 は 2000年9月に母が入院してから始まった。
「母」 にあるように
私は あーちゃんとまゆのてづくり交換日記 （母と長女の交換日記）を届ける役目をしていた。
小学３年生の長女は、乳幼児のころから、とても敏感な子で
病院のにおいが苦手であることと、幼稚園児の次女と違い、小学校を休むことができないので
お見舞いも、あまり行けなかった。
包装紙で、てづくりの交換日記を作り、祖母である あーちゃん に、手紙を書いていた。
9月15日の午前中に、長女と次女の叔父である、私の弟の自死を、
「絶対に、あーちゃんの手術が終わるまで、あーちゃんに話してダメよ」
と、厳しい声で言った私の言葉が、彼女には重たかったのかもしれない。
9月21日だったか22日に母は手術をした。
弟の密葬のために、シンガポールから訪れた妹が
弟の死を伏せ、母の見舞いと、主治医からの手術の説明を受けたことで
不安と喜びの表情を見せた母だったが、娘たちがそろって
自分を心配してくれていることは、母にとって励みにもなったと思う。
妹は、母の手術後にシンガポールへ帰った。
手術の麻酔の醒めかけた時に、第一声が
「おとうさん！」
そして、妹を見て
「ゆりちゃんきれいねえ」
入院前から心配と、毎日、病院を訪問し、
母の必要なものなどを買い求めて見舞っていた長女の自分は、
「ママ。大丈夫だよ。全部悪いものは取ったからね」
と、必死に声をかけたが、長女の私へのねぎらいの言葉はなく、
母と二卵性母子といわれていた私は、むしろ、すべての後まわしであるという
母にとっての安心できる存在であったのだろうと、
苦笑いしつつ、長女の役割を思うのだった。
母の手術後、長女の孫娘である私の長女が、
お見舞いの代わりか、当時、女の子同士で流行っていた交換日記の延長であったのか、
もはや、手づくり交換日記の誕生した理由は不明であり、
今は、その理由も必要ない。
長女のてづくり交換日記は、その後、20年以上を経ても、
母と孫娘の確かな絆として、私の宝物になった。
「まゆちゃん。運動会行けなくてごめんね。
かけっこ１等になるように応援してるよ」
母のそんな日記に
「もう！１とう、とれなかったよ。
ちゃんとおうえんしてくれてたあ」
そんな二人のやり取りが残っている。
母がそれを見て
「これ、まゆちゃんたら応援してないから
1等とれなかったって言いたいのかしら？」
と苦笑していた姿を思い出す。
9/29（金）
まゆちゃんげんきですか。
あっちゃんも少しづつ良くなってきまた。
いつもお手がみとが 花とかメモチョウとか
いっぱい作ってくれて ありがとう
早く退院してまゆちゃん
とあそぶのをたのしみにしています。
運動会がんばって たのしくやってね
まゆちゃんの4年生の運動会はぜったいに行きます
9/29(金)
あーちゃんへ
今は、さいごのうんどう 会のれんしゅうとしました。
がんねんたいくで ほんばんやるものを ぜんぶやりました。
80m走がプログラム３ばんで こじんでやる
しゅもくがいちばんさいしょです。
それに一ばんさいしょに走るのできんちょうします。
１いをとりたいからおうえんしてね。
がんばるぞー！
9/30 土 晴
まゆちゃんへ
くつ下ありがとう
明日たの運動会は あーちゃんは真由ちゃんが
一とうとれるようおえんしています
おなかのきずはあまりいたくないのですが
こしとせなかがいたくてシップをしています
もしかしたら10月10日ごろにはたいいんできるかもしれません
そしたら真由のたんじょうびプレゼント買いましょうね
いっぱいあそぼうね
10/1（日）
今日は、うんどう会でした。
80m走は４いでした。
あーちゃんおうえん してくれた？
らいねんは ぜったい１い
をとりたいです。
10/6 金 晴
まゆちゃん毎日お手がみ ありがとう
とてもうれいです
こくごのテスト100点は すごいね
それからごはんも 少しづつ たくさん食べるように なりました。
だからげんきになって くると思います
またびよいんに
あそびにきてください。
テストも100点を
いっぱいとってください。
それではまたかきます
まゆちゃんへ
ああちゃんより
10/6（金）
おとといから まゆのうしろの あいちゃんが
まだきません。
ちょと心面（※注 心配）
です。
3れんきゅう
あるから、火よう日はくると思います。
あーちゃん
早く元気になってね。
10/7(土) 晴
まゆちゃんのお友だち
早く元気になって学校にくるといいね
ああちゃんも毎日
いっぱいごはん食べて
早く家に帰りたいです
おいしいごはんを
たくさん作って、
まゆちゃんたちと 食べたいね
シルバニアも出して あそびたいね
早く帰りたい 帰りたい と、いっぱい思っているよ
じや又書くね
※ 今ならきっと 【Amazon.co.jp 限定】シルバニアファミリー 赤い屋根の大きなお家 デラックス ―なかよしガールズセット― を買ってもらっていたかもしれません。（笑）
10/8（日）
きのうの さんまのからくりビデオ たのしかった
あと じいじと あやとりしたら
ぜんぜん ダメーー！
10/13（金）
あしたはとってもラッキー。
パパとラグビーを２時から見ます。
あーちゃんテレビに でるかもしれない からみてね！
よくわかんない
けどー！！
テレビにでるかも わからない・・・
でも、一お（※注 一応）
みてね～！！
それから まゆが 11月4日に
作文のしょうじょうを ぶたいでもらうの。
きんちょうしそう。
うれしー！！と
いうか。
きんちょ！！と
いうか！??
たのしみ～
かな？・・・・・・！！
10/14 (土)
今日はすごく良い天気
ラグビはどうでしたか
作文のしょうじょうもらうなんて
すごいね。 ああちゃんは
一度ももらったことなかった
まゆはすごくがんばって いるんだね
ほんとうにえらいね
しょうじょうもらったら見せてね
あっちやんも もう少しで
退院できるんだって いっていたよ
ごほうびに なにかしようとおもいますので
考えておいてね。
じゃまたね
大好なまゆちゃんへ
ああちゃんより
本いっぱい ありがとう。
あーちゃん じ まちがってるよーぉ。
「ラグビー」が「ラグビ」になってたよ
あと
「あっちゃん」 て さいしょ かいてあって
さいごに
「ああちゃん」って なってた よ きおつけてね♡♡
まゆ子より♡
謝辞
小学３年生の長女と母の交換日記を お読みいただきありがとうございます。
母と私と弟の生まれた冬を思い起こすような冷たく厳しい
つらい記憶の記録でございますが、家族であった時間にある
たくさんの愛情を決して忘れることはできません。
お時間あれば、私が生まれ育った大切な家族の話をご高覧ください。
記憶の黙示録
昭和22年1月2日生まれの母の姉である伯母に、母の通夜か告別式の日に
（忌日 2001年2月11日）
「まりちゃん。ママのことを書いて。ママがどんな風に生きてきたか。まりちゃんにしか書けない。」
その約束を、少しずつでも果たしたいと思っています。
お時間ございます方は、
過COノCO途 にある THE WAY WE WERE – 追憶 の
私の 忘れてはならない 記憶の黙示録 の 拙文をお読みいただけましたら幸いです。
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